そのカンテラは「願いごとを、ひとりにつきひとつだけ叶えてくれる」んだそうだ。
大きな力を持った誰かが、流れ星の力を封じたというカンテラ。
あるとき、そのカンテラを偶然手にした男の話がある。
ほんの拍子に「おまえなんか消えてしまえ」と、カンテラの前で口に出したばっかりに、愛する人を失ってしまった男の話。
男は嘆き悲しんだ。
過ちを悔いて、彼女をどんなに愛してるか悟って、その後も諦めきれず、カンテラを持って色んな場所を旅して回る。願いの叶うカンテラの力、その話を聴いてなお、自らの願いよりも男の願いが叶うことを望み、カンテラにそれを願って、その男を愛する人を失った悲しみから解き放つことができる者を探して。
いくつ星が流れたか、それも正確にはわからないくらい時が経って、やがて男はがぁらの街から砂漠を越えた先、城塞の都に辿り着く。
そこで男は、ようやっと、自らの手で下ろしてしまった長い夜のカーテンを、開けてくれる人物と出会った。
銀色の髪をした、セラ。セレスティアという名の青年。
彼はカンテラに、男の愛する人が帰ってくるようにと願って…、
願いは叶った。
既に人生がひとまわり以上終わるくらいに時は経っていて、それでも後悔という枷に縛られていた男が、ようやく解放された。
愛する人が待っている天へ、朝の陽光と一緒に上っていったんだ。
大事な人の幸せを、という自分の願いを横に置いてカンテラへ願ったセラに、男は商人として、赤い宝石のあしらわれたブローチを残した。
きっと、彼からの感謝の気持ちなんだろう。
彼が今までの悲しみと苦しみと後悔から解放されて、ゆっくり眠れることを、心から祈りたいと思う。
■城塞の都・都のバザールにて■
(セラ、願い、灯火)
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