雨は街も、それから人の心も柔らかく濡らすらしい。
雨降りの広場に、開いたまんまの傘が落ちていた。
誰のかと思ったら、エイザー(スリに出会っちゃって、やむを得ず捨てたんだって。本人には逃げられたけど、財布は無事だったみたい)のものだった。
スリを追っかけてた時間で、ずいぶん頭や服を濡らしちゃってたから、拭くものを貸して、近くの店の軒下で、話をしながらひと休みする。
この前城塞で会ったときから、俺はエイザーに嫌われてるかと思ってたことや、友達って呼び方について、その後ろに潜めてる意味について、そんな話をした。
エイザーは別に俺を嫌っているわけじゃない。
ただ、人は自分を嫌う、って、きっとそう思ってしまうことが多いんだろう。
けど少なくとも今日で、俺がそうじゃないのは判ってくれたみたいだ。
友達だって言っても、特に嫌な顔はしなかったと思うしね。
それから俺は花に例えると、紫陽花みたいだってさ。
……水も滴る?なんてね。
■繁華街の噴水広場にて■
(エイザー)
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