彼をどっしりと肝の据わったふうに見せるのに、名前に入った竜という文字は、きっと一役かっているんじゃないだろうか。
東に生まれ、商人として各地を渡り歩いてきたっていう、くずりゅうのお兄さんに出会ったのは、砂浜で探し物…面白そうな形をした石や貝がら…をしてたときだった。
色んなところを回って落ち着いたこの冒険者の街は、薬の行商のお兄さんにとってもお客さんの多い、なかなかに暮らしやすい街らしい。傷薬はもちろん、悪いものを食べたときに使える腹の薬も売れてるんだって、確かに、冒険者さん達は比較的、ちょっと古くなったもんでも平気で口に入れたりする傾向がある気がする。
商売の話を聴いたり、俺の隻眼のことを心配してもらったりした。
魔法で治療する術がないのか、と聴いてもらって、そういや以前に一度、魔法や錬金術でどうにかする方法があるだろうか、と考えたことがあるのを思い出す。
結局は、まったく見えなくなったわけじゃないし、片方が残ってるなら十分かな、と思い直して、その方法も詰めないままこうして今に至っていて、きっとこれからも詰めることはないだろうな、と思ってるけど、くずりゅうのお兄さんが、それを清貧なんて立派な言葉で表してくれたもんだから、何となくちょっと恥ずかしくなったな。
でも、山奥を流れる清流を身のこなしに写したんだろう、と言ってもらったのは、素直に嬉しいと思えた。俺の故郷は山と森の深い、この街よりも少し北にある国で、それを俺が表すとき、決まって田舎だ、と言う。
そこに込めたのが故郷への思慕だと汲み取ってくれたのが、きっと何よりも嬉しかったんだ、うん。
■潮風の港街にて■
(くずりゅう)

PR