初めて鳴らした鳥笛の音は、彼女の瞳と同じくらい澄んで響いた。
フェフェの里の水源が年にいちどだけ枯れる原因を探して、俺は砂漠に出てきている。
砂が熱でじりじり焼ける時間に休んで、夜になったら移動を始めるのが、もっぱらの俺の動き方。
暑いのよりは寒いのの方ががまだ慣れているから、時には夜明けまで動いていることもある。もちろん、凍えないようにちゃんと服は着込んでね。
夜中よりも夜明けに近い時間に聴こえたのは、オアシスだけを渡る鳥さんの声を模した笛なんだって、それを持ち歩いて鳴かせていた冒険者の女の子、シリカが教えてくれた。
鳥さんの声に似せて唄う鳥笛。吹いて鳴らすんじゃなくて、紐のとこを持って、ぐるぐるって回して鳴らすんだ、これもシリカが教えてくれたから、早速鳴らしてみたら、飲み込みが早いって褒められちゃった。
冒険地で見るもので想像を絶してみたい、と夢を語った彼女の瞳は、その声にも鳥笛の高い音にも劣らずに透き通っている。今は見上げる距離だけど、いつかその声と瞳は星に届いて、対話ができるんじゃないか、と思わせるような色だった。
そう思っているうちに夜が明けたから、彼女と星との心の通わせ合いは、次に会える夜に期待しておこう。
この砂漠にだけ住まい、オアシスを渡って生きる鳥さんのことも、砂漠を渡るときには心に留めておくこと。会えたらシリカに報告するのも忘れないこと。
■太陽と月の砂漠にて■
(シリカ)
