「リーフ・フランツに歌と安らぎを」
仕事から帰って、眠り直して起きたら、外は大雨だった。
今朝手配してきた借り物を届けるのがその雨でちょっと
遅れるって、そう知らせが入ったもんで、
ちょっと迷ったんだけど、傘を開くことにする。
直接伝えに行くんなら、届けものも直接すれば良かった、と思った。
でも、広場の店まで歩こうとして、家を尋ねても不在で会えなかった
リーフに出会えたから、後悔は偶然への感謝にすぐ変わったんだ。
彼女には、シスコのお兄さんから頼まれたお使いを届けないといけなかったから。
それに、店に行くまでもなく、借り物を返す相手…ヘヴンとも
途中の店の軒下で、一緒に雨宿りすることになったんだから、
今夜はきっと、幸運が俺に集中してたんだろう。
商人シスコ・フランツから頼まれたお使い、
ある女性…彼の妻への歌。名前を聴いてみれば、赤い髪をしたその女性は
海で出会って以来の俺の友達、リーフだって言うじゃない。
(彼女には竪琴を持ち始めたばかりの頃、練習するとこ見てもらったり、
一緒に孤島へ出かけたこともあったっけ、そういえば)
聴いた時はびっくりしたけど、ほんとだってわかって、もっとびっくりした!
ほんと、時間ってのは、いつの間にか経つもんなんだねえ。
リーフが庭に咲いてる花の話をしたから、
そういや一度、港の高台にある家を尋ねたときに
蒼い花がいっぱい咲いてたのを思い出して、
雨に濡れる蒼い花の歌を唄うことにした。
歌を気に入ってはくれたらしいんだけど……、
どうも、シスコさんは長いこと家を空けてるみたいで、
所在や様子を心配してたというか、怒ってる感じだったような…。
もう、そこまでちゃんとフォローしなきゃ、もっと怒らせちゃいそうだよ?
ヘヴンにも、借りてたヴァイオリンについて直接伝えることができた。
賃貸延滞料は何とかつかずに済むみたい。
送ったぶんをさっぴいて、返す予定の借り賃は、
あと銀貨128枚。ヘヴンを仲介して俺が誰かに
音楽のレッスンをするって話もあったけど、
……うん?
それって、返済にあてると思って良いんだろうか。
別勘定だったらどうしよう。
■繁華街の噴水広場にて■
(リーフ、ヘヴン)
びっくりはともかく、久し振りにリーフに会えたのは嬉しかった。
孤島から帰って来てから確か一度まみえて、
それからは顔を合わせてなかった気がする。
結婚したのはいつ頃なんだろ。
今度ゆっくり聴いてみようか、もしか気紛れで、
俺に音楽のレッスンを頼んでくれた時にでも。
ヘヴンと一緒にリーフの馬車で送ってもらう途中、
取り留めない話をしながら、そんなことを考えてた。
さあて、用事も済んだことだし、
城塞に帰る準備をしようか。

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