「叶える」と言ったその顔は、自信に満ちているように思った。
広場を歩いていて、そういえば今日は7月7日だ、
そう何となく呟いたら、ベンチに座ってたお兄さんが顔を上げた。
反応した原因は、今日が7日だって忘れてたから。
それと知らずに女の子に声をかけても全然成功しなかったのと、
それから、ほんとは今日から仕事に出るはずだったのに、
うっかり忘れてさぼっちゃったらしい。
そのお兄さんは人をからかうのが好きだったり、
綺麗な女の子に見境のなさそうな感じではあったけど、
でも、お人好しだった。
だってさぼったかわりに、俺の願いを聴いて、
それを叶えてくれる、なんて言い出したうえに、
俺がなかなか願いごとを思い付けないでいたら、
無理して絞り出さなくても良い、なんて言うんだよ。
そんな面白いお兄さんに、今夜の星のことを頼んだ。
それを叶えるって言ってくれ、って言ったら、
ねえ、信じてもらえるかなあ?
昼間は曇ってたのに、夜、満天の星空が見えたんだよ!
不思議なお兄さんだったなあ。
お人好しで、可笑しそうな笑顔が眩しくて、
まるで、七夕に願いを聴いてくれる星みたいに。
■繁華街の噴水広場にて■
(男)
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