詩人や歌唄いの仕事は、歌や楽器をやるだけでは終わらない。
正確に言えば、それは仕事ってもののうちには入らないのかも知れないけど、仕事に附随してくるもんでもあるから、一部分ではやっぱり仕事だと思う。
噂話を聴いて談義したり、その噂話を持って帰って、別の場所で誰かにそれを伝えたり、そうして素敵な話や新しい情報を広めていく。そうすると、俺が歩いたぶん、誰かはそれを歩かずに聴ける。その誰かが友達に会ったらそれを話して、また広まって、どこかでまた別の詩人がそれを耳にして…、そうして流れる風の噂って、いったいどこまで伝えられるだろう。
今日聴いた噂は、都にできた新しい店の情報。
この街は入れ代わりが激しいから、俺も一度行ってみて、できれば評判を噂で流してあげたいものだ。
噂を聴かせてくれた人達を見送って、そんなことを考えながら竪琴を弾く。
聴いてもらうのだって大好きだけど、こうして一人で琴を弾いたり、歌の練習をしてる時間もとても好き。
■城塞の都・都のバザールにて■
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