声を殺すだなんて、世の中には怖い薬もあるものだ。
夕方、特に決まった仕事もなかったから、路地裏で竪琴を弾いていた。
聴いてくれてたのは猫さんだけかな、と思ってたんだけど、どうやら他にも人影があったらしい。
俺もぱっと見、人影とは認識できなかった、マントに包まって寝てたお兄さん。
テスカさんっていうそのお兄さんは、強行スケジュールをこなして、用事を済ませに今朝、城塞に着いたばっかりだったんだって。
でも疲れもあってか、うろうろしてるうちに道端で寝ちゃったとか。
腕に覚えはありそうだから、危ないって心配はいくらか和らぐけど、それでも風邪をひいたりすると大事だから、今度はぜひ気を付けてもらいたいよね…!
ひとまず腹と寒さを満たすのが先だろうと、近くの食事処に案内して、道中やその店で色々と話を聴いた。
都へ来た目的は、彼の知己からの依頼。
依頼は、「声を殺す薬」を作るための材料探し。
そのために、女性の姿をしてるっていう唄う魔物、ハーピィの声帯と、呪術を操れる人を探してる、ってことだった。
テスカのお兄さんに依頼をしたのは女の人だって言うけど、一体、声を殺す薬なんて、どんなことに使うんだろうか。
もしも俺がそれを飲んじゃったら、もう2度と声が出なくなっちゃうんだろうか。
ぞっとしないや。
でも、目的によってはもちろん自分でも制す、と言ったテスカのお兄さんに、何かできることがあれば協力することにする。
ひとまず呪術師については、以前に都で出会ったことのある、スライマーンのお兄さんについて少し話しておいた。
色々することがあって大変そうだったけど、依頼が達成できれば良いな。
※テスカのお兄さんの宿は「夢の島亭」
■城塞の都・都のバザールにて■
(テスカ)

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