言うまでもなく、俺は歌唄いだ。
色んな場所に伝わってる歌も唄うし、自分で作った歌も唄う。
俺が作った歌なら、俺の歌、だ。
でも、それを唄うのは何も俺だけでなくても構わない。
旋律を口ずさむのに、特別な資格はいらない。
歌が風に乗って広がるのに、分厚い壁はない。
夜明けの前の酒場で俺が弾いてた子守唄(この時間なので、歌は頼まれなかった。眠ってるお客さんたちを刺激しないように、ゆっくりの旋律で低くて静かな曲を弾いてくれって)の旋律を盗んだ、って言った女の子…小さな、都の「九官鳥」も、俺から盗んだあの曲で、色んな人の耳を魅了してくれてると良いな。
一緒にいたミラベルには、寛大だ、なんて言われちゃったけど。
そういや、あの子守唄で眼を覚ましちゃったって言ってた、うーん、曲について考える必要あり、かな。
彼女には今日初めて出会ったけど、とても素敵な響きの名前をしていると思う。
音を表す文字と、それから楽器を表す文字、両方が篭ってる。
ミラベル。何だか、何度でも呼びたくなっちゃう名前だな。
■城塞の都・都のバザールにて■
(ミラベル)
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