幻術って言ったら、そこにはない幻を見せるもんだとばっかり思ってたけど…。
何となく聖堂に足が向いたけど、時間は既に深夜を回っていた。
参拝のお客さんも少ないこの時間に、珍しく新客さん。
帽子を被った、淡い水色の髪をした女の子だ。
歳の頃は16〜7歳くらいってとこだろうか。
ただ、声に何となく聴き覚えがあると思ったら…、
幻術を身に受けて、一時的に姿の成長したラクチェだった。
背の小さな彼女を見慣れていたので、びっくりした。
ラクチェの言うところによると、限りなく現実に近い幻術で、
影響が長く続いてるんだそう。幻術ってひとくちに言っても、
色々あるんだねえ。
それから、俺を困らせるくらいは許してくれって。
……そういう風に言われるたびに申し訳なくなるけど、
それで彼女が気を晴らしてくれるなら、とも思う。
■山頂の大聖堂にて■
(ラクチェ)
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