場所はずれな小夜鳴き鳥も、今日の満月も、彼女の纏った黒い毛皮も、そこから続く黒い髪も、命の営みに続くものは美しいと思えた。
仕事の帰りに海沿いを通ったら、昼も夜も唄う小夜鳴き鳥がさえずっていた。
森でならともかく、港じゃ見かけるのは珍しいその子を手元に呼んで、そしたら別の通りから、散歩帰りのオーリエンダも捕まえたので、責任もって送っていくことにする。
その道中、ずっと気になってたことを尋ねてみたんだ。
きっかけは、そうだな、美しいものについて話をしたからだったろうか。
命は美しい、とオーリエンダが言ったから、そうだ、聴きたいと思っていた、と思い出した。
彼女の命がついえてなお帰ってきた、その理由、オーリエンダ自身の中にあるその意思。
もしも俺がと考えたとき、きっと帰ってくるには何か理由がある。帰ってきたとしたら、その理由を実現するために行動するんだと思う。
でもオーリエンダは、顔を合わせたら相手をしてくれるし、まるで以前とほとんど変わりなくて、もしも理由や意思があったとしたら、それがちゃんと果たせてるのか、俺と話をしてる時間も、ほんとはその目的にあてたいんじゃないだろうかって、そう心配になったからだ。
教えてくれたその目的は、すぐにも叶うものではなさそうだった。
叶えるために動くんじゃなく、叶う時を待っているように見えた。
叶うにはまだもう少し、と彼女は言う。
それなら今までみたく、それまで重なった時間をゆっくり共有しても良いのかな。
まんまと取り付けた、次の約束の時にも。
…ついでに、責任持ってって言っておいて、結局まっすぐ送らなかったのも、許してもらえるかどうか交渉しておこう、今度。
■潮風の港町■
(オーリエンダ)

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