クリスマスを祝った歌は、楽しい歌も静かな歌も、それはたくさん残っている。
それだけこの日に思いを重ねる人が多いってことなんだろう。毎年クリスマスが近付くと、俺も残った歌のぶんだけ仕事が増えて、ちょっとした稼ぎどきになっている。
その中で、唇よりも耳に馴染んでる有名な歌があるんだ。
まだ故郷にいた頃に、よく唄ってもらっていた曲で、俺は仕事ではそれを唄わないことにしてる。
だから仕事がひけた後、人も少なくなった酒場でこっそり(あるいは、つい口をついて)ちっちゃく唄ってたのを、うっかりオーリエンダに聴かれてしまった。
晩酌のお供と肴を探していたらしい彼女に、すぐにやめようとしたその歌をもう一節唄って、歌の話やクリスマスの話をしながら、そのグラスに注がれていたワインを追加して俺も相伴に預かる。
酒をある程度飲んでも記憶がはっきりするようになったあたりは、俺も成長したか、それとも城塞で暮らし始めたおかげかな?オーリエンダはクリスマスにひとまずパーティーを開きはしないってことと、前にも聴いたけど夏が好きだってこと、聴かせてもらったことがたくさんと、それから買い物に行く約束をした。
クリスマスまではもうすぐ。
街に彩りが増えて、楽しい雰囲気はきっと緩やかに加速する。
彼女は買い物では俺の好きなものを選んでくれるって言ってたけど、ここは男として俺も、それでお姉さん側の好きなものをこっそり探らないとね、贈り物を考えるのは好きだから、何を贈るか考えるのも楽しそうだ。
今日も気付かない間に、酒と紅茶の代金を払ってもらってたしね…!
■冒険者達の酒場にて■
(オーリエンダ)
聖樹を表したクリスマスの歌を故郷で唄ってくれていたのは、オーリエンダの褐色の肌とは対照的な白い肌の、それから黒い髪とも対照的な、白や銀に近い金色の髪をした人だった。
あの歌もいずれ、気が変わったら本格的に練習して、仕事でも唄ってみようか、と思う。

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