眼以外によっても、何かを視ることができる、ってこともある。
休憩している火を少し離れて、辺りの砂丘を歩いてたら、
馬に乗った人影があった。
声をかけてきたのは女の子で、近くのオアシスまで届けものの仕事をして、これから都に帰るところだったみたい。
近付いてフードを下ろした彼女の眼には、
瞳の模様が刺繍された布当てがされてた。
それで本物の眼を覆ってるのは、眼が光に弱いからなんだそうだ。
生まれつきの体質。
俺は左の眼がきかなくなって、距離感のずれやバランスの取り方に苦戦して、最初の頃よりか慣れてはきたけど、そんでもやっぱり今でも気を抜くと、何もないところで転びそうになったり、側にある物に気付かなくて、ぶつかりそうになったりするんだ。
それが生まれてからずうっと、なんて…
どんなに大変だったろう。それとも、生まれつきだから、
大変なのはその視界じゃなくて、周囲を眼で良く捉えられない、ってとこなんだろうか。
ともあれ、魔法のような方法を使って、
形や表情を捉えることができるっていう彼女と、
俺が同行させてもらってる隊商さんに頼んで、都まで一緒に行くことになった。
後から聴いた彼女の名前は、レーヴェン。
■太陽と月の砂漠にて■

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