寝起きに毛布と、それから見覚えのある顔、聴き覚えのある声。
これほど安心できる組み合わせもない。それが久し振りに会う人なら、嬉しさも加わってもっともっと。
とは言え、どのくらいかはっきり覚えてないぐらい久し振りで、俺も言い出すのに少し躊躇ったんだけど、相手…キリアの方も、おんなじように思っててくれたみたいで良かった。
改めて簡単に自己紹介し合ったあと、キリアが持ってきてくれた毛布に包まって、それから暖炉にもあたりながら、彼女の話の中で、ちょっと気になったことについて聴いた。キリアは孤児院の子ども達の相手をしに来てたみたいなんだけど、俺が見覚えのある顔だと思って見たら、落書きのあとは消したはずだー、って言ったんだ。
少し詳しく聴いたら、女の子たちの化粧の練習台になっていたらしい。
化粧っては、勿論自分を綺麗に見せるためのものだけど、そこは幼い子どものすること、まるで彼女達が描く女の子の絵のように、とっても大胆な仕上がりになることは想像できる。
それは何とか綺麗に落としたけど、キリアは普段、あんまり化粧はしないんだそうだ。化粧具の匂いより、酒の匂いのが似合ってる、って。
確かに精霊さんの気配を感じられて、水の精霊さんと相思相愛、そんなそのまんまの自然なキリアらしいけど、きっと化粧した姿も似合うと思うんだよね。と、そう言ったら、慣れないせいなのか、恥ずかしがってしまったようだった。
キリアだったら、孤児院の女の子たちに憧れられる、お化粧上手な素敵なお姉さん、てのになれると思う。
もし今後練習台になるとき、女の子達に逆にアドバイスできるような、キリアに似合った化粧を教えるために、もし必要なら彼女へのアドバイス役として、声をかけてもらう約束をした。
帰り際に扉の隙間から見た彼女(子ども達に呼ばれてたみたいだった。ほんとに慕われてるんだなあ)の顔が、慈愛の傍ら、何となくちょっとだけ寂しそうな、何かに思いを馳せるような表情だった気がしたのは…俺の気のせいだと良いんだけど。
■山頂の大聖堂にて■
(キリア)

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