剣を抜き、構え、そして振るう、人が生み出した道具のひとつを使うためのその一連にも、中に自然を垣間見ることができる。
俺も噂を聴くだけじゃなく、観客席に足を運んでみようと思い立った。
闘技場には今回の大会に出場もしてるアルがいて、対戦相手を待ってたところだったみたい。
でも元から予選には決まった時間、決まったカードというのがない大会。相手が現れない間を使って、棒倒しのようなことをしてたから観てたんだけど、しくじったらしくこっちまで上がって来た。
彼と少し話ができたのは、考えればちょっと久し振りの機会だったかも知れない。
狩人だっていうイルのお兄さんも加わって、今回の大会や狩りについて話をしていると、何だか寒そうにしてるカレル(これまた久し振り。街で一度話をしたの、覚えててくれたみたいで嬉しかった)の姿が見えた。アルとは知り合いだったみたい、親しげに話をしてたから。
何となく、何となくそんな気はしてたけど、2人で寒さを克服するのに走りに行ったと思ったら、次の瞬間にはその姿は闘技場にあったんだ。
途中からみかづきもやってきて観戦したその試合は、まるで泰然自若の火山と大樹の対峙だった。
お互いの剣を認め合い、まっすぐにぶつかり合う、とても小気味の良い試合。
今回の軍配はアルに上がったけど、もしも次があったらわからない、と思う。
イルのお兄さんが、自分の武器(さすが狩人さん、弓を操るみたいだ)では今回のS-1に出場できないので、ちょっと残念そうにしていたのが印象的だ。今回の大会っては、それだけ剣士さん以外の人達にも影響を与えてるんだろう、大会が終わっても、闘技場の賑わいは絶えないかも知れない。
それから、みかづきとも久し振りの対面だったんだ。
試合が終わりしな、お互いが都にいるうちに食事でも、って言いながら一緒に出た……はずだったんだけど、いつの間にかはぐれちゃってたみたいだった。
後にした闘技場から、また賑やかな歓声が上がってきたのが聴こえた気がする。
■城塞の都・闘技場観客席にて■
(アル、イル、カレル、みかづき)
