試合が始まる直前になると、バザールはいつも以上にごった返す。
そんでもって、普段は城塞にいなくて、バザールに慣れてない人もいっぱい観戦に来るもんで、闘技場に行く道がわからなくなってしまう人もたくさん出てくる。
今日は大通りからすぐ入れる路地裏で演奏をしてたんだけど、やっぱり道を尋ねられることがいくらかあったんだ。
路地裏を覗き込んだ商人のスラヴァも、そんな人達と同じような状況に陥ったかと思って、道はこっちじゃない、って思わず言っちゃったんだけど…、どうやら道がわからない訳ではなかったらしい。
この人込みが苦手で、あまり人の多い場所に観戦へは行ってないそうだ。
試合の終わった闘技場へ足を運ぶことの方が多い、って言ってたけど、やっぱり興味があるんだろうな、人込みが苦手なのが解消さえしたら、きっと楽しんで観られると思うんだけど。
そんな話をしてたら、少し懐かしい顔が食べ物片手に通りかかった。
剣士のストーリー。
俺の記憶が正しかったら、たぶん会うのは凍土に行った時以来。
初めて出会ったのは…、そう、KOGTの前だった。
スティはその頃とはちょっと雰囲気が違って、髭は剃ってないし、駄目剣士でいる方が楽しいってわかったー、なんて言ってた。
そう言いながらも観戦に来る(…タイミングは、たまたまだったみたいだけど)のは、駄目って冠をつけたとしても、剣からは離れられない、ということなんだろうか。
スティが観戦前に腹ごしらえをするつもりだと言うので、
近くにある「お母さんの馬糞亭」に、スラヴァ(スティに、油断すると攫われそうだから路地裏には注意しろ、って忠告を受けていた。俺も、彼女は気を付けて損はないと思った)も伴って食事に行くことにする。
とりあえず今日はスティの髭は剃らせたよ。
それから酒で潰すって宣言されたんだけど、
………それについてはまあ、ここには記録しないでおこう。
■城塞の都・都のバザールにて■
(スラヴァ、ストーリー)

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