もし人がケーキになったら、そのまんま食べられちゃったら…?
道端に落ちてたのは、砂漠の向こうの街の新聞だった。
少し前の日付けで、どんな様子だろうって中を読んだら、最近のギルドの依頼や、発見された冒険地なんかのことが書いてあったんだ。
その中に、お菓子でできた城の話題があった。
字がちっちゃかったから、思わず顔を近付けて読んでたら、微かに甘い匂いがした、その次の瞬間には、そう、女の子が一人、俺に向かってとんでもないことを叫んでた。
「貴方、ケーキになっちゃうのーーーー!!!」
……ガーリィと名乗ったその女の子は、夏休み中の魔術師学院の生徒さんだそうだ。
香りを扱う魔術を研究していて、その修行の一環として、その匂いを嗅ぐとケーキになってしまう呪いをつくったんだって。
さすがに俺も初めて聴いた呪いだったけど、完成しきってはなかったみたいで、一瞬でケーキに!
…なんて事態にはならずに済んだ。
その間でガーリィに、呪いを解いてもらうことができたんだ。
ガーリィは俺に好きな場所のことを尋ねて、持ってた色んな香りを混ぜて、だんだん甘い匂いがしてきてた俺に、自分だけの香りを取り戻させてくれた。
海や森、空、砂、ついたくさん挙げちゃったけど、それをきちんと寄り合わせられるんだから、魔術師さんってのはさすがだな。
ガーリィにはきっと、優しくて元気に咲いてる花の香りがとても似合う。
■城塞の都・都のバザールにて■
(ガーリィ)