ある青い屋根の酒場に、赤毛を結い上げた綺麗なお姉さんがいる。
その人はいつも窓側の席で煙草を吸って、
言い寄って来る誰かを片端からこっぴどく振って、
誰かを待つように窓の外を眺めてるんだ。
たまたまそこで仕事をした俺は、城塞に古くから伝わる恋歌、月を愛した男を思う女の人の悲恋の物語を唄った。
その後、道端に場所を変えたらたまたま出会ったロジャのお兄さんの仲間たちも、その赤毛のお姉さんにことごとく振られちゃってるんだって。
彼女は全然なびかない、気の強い眼をしてる、口振りはぶっきらぼうだったけど、彼女が魅力的だってあんまり言うもんだから、その歌をやったときのお姉さんの反応はどうだったかー、って質問の答えは秘密にした。
彼女の魅力はロジャのお兄さんと、その仲間達が共有する秘密。
共有の輪に俺も入れてもらうのに、煙草の呑み回しをする。
…苦手だから吸い込んですぐ咳き込んだら、すごく面白そうにされたけど。
ま、彼の吸ってたあの煙草の匂いは好きだけど、
それを自分で吸うのとは、また訳が違う、って言い訳をしておく。
※路地裏なんかの酒場で酒や煙草をお代にもらったら、
呑めなくても遠慮しないで受け取っておく。
後で誰かにあげられるかもしれない
■城塞の都・都のバザールにて■
(ロジャ)

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