呪文の詠唱も言葉を紡ぐ歌も、元はおんなじものだったんだって。
大魔導師のアランさんは、だから歌にも魔術にも、
似た効果が出ることがある、って教えてくれた。
俺は歌と旋律にほんのちょっと力をのっけて
魔術のようなことを起こすことはできるけど、もう2年も前、
海で突然開花させることになったその力を行使する方法は、
いつも勘とフィーリング。
まさに「身体で覚えてる」ってやつだ。
だから未だにその仕組みだとか、理論だとかはわかんない。何となくしか。
けど今日アランのお兄さんが教えてくれたから、
俺がこの力を行使してるのは、きっと唄うことで
「詠唱」してるのかも知れない、って何となく気が付いたんだ。
…でも、研究不足なのは変わらない。
街にいる間に、魔術師さんの学院で文献を漁るぐらいのことはやってみるべきかな。
ところで、アランさんは「リンボーダンス」というダンスをするらしい。
その実力は大会優勝、でもって酒場のウェイトレスのお姉さんが、
お兄さんのために舞台にダンスの用意をするほど。
お姉さんが途中で引っ込んじゃって(具合が心配だ)、
結局踊りは見られなかったけど、それも今度までに研究しておこう。
リンボーダンスについてといい、魔術についてといい、
アランのお兄さんは、何ごとにも真摯に取り組む人なんだな、って思う。
■冒険者達の酒場にて■
(アラン)