夢なんて、大体のところはっきり覚えてないものだ。
酒場で居眠りして舟を漕いで、机に頭をぶつけて眼が覚めた。
時間は深夜、夜明けも近い頃合。何となく夢を見た気がしたんだけど、でもどんな内容かをはっきり思い出せない。
考え込んでたら、冒険者のルスカ(馬車を逃して、遠くから時間をかけてここまで歩いて来たんだそうだ。この日は、酒場の上の宿に宿泊したらしい)が声をかけてくれた。竪琴と一緒に手を繋いでたのかい、って。
そしたらすぐ続けて、女の子が入って来た。魔術師の学院の特別研究生、ソフィー。
ずいぶん幼く見えたけど、とてもしっかりした考え方をしてる子だった。
故郷からここへ学びに来たことを、とても誇りに思ってるみたいで、故郷や学院について話をするときの彼女の表情は、心から輝いてたよ。
ルスカは珈琲、ソフィーはホットミルクとビスケット、俺は冷たい紅茶。
取り留めもない話をして、ルスカの次に見る夢の続きに期待して、ソフィーに故郷の話なんかを聴かせてもらいながら、夜明けの街を歩いた。
夢は思い出せなかったけど、引き換えに出会いと、楽しい一時が過ごせたから良しとする。
■冒険者達の酒場にて■
(ルスカ、ソフィー)
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