人にはそれぞれ得手不得手というものがあって、とりわけ俺にとって、家事全般は得手にあたる。
錬金術師のシェリルにとっては、しかしそれは不得手にあたったようだった。
見知りの俺の姿を窓から見かけて、屋敷の掃除を喜んで放って出て来た嬉しそうな顔を見たら、そりゃ一目でわかろうってもの。
整理整頓が苦手なのに加えて、職業柄本なんかが溜まりやすい彼女の部屋は、どうもなかなかすごいことになっているらしかった。とりあえず、掃除についての助言と手伝いをする約束をしたところで、探し物をしてるらしいロマに出会う。
探してるのは、以前もおんなじように探していた「大虎」。
ただし今回は、牙の形の装飾品じゃなく、子猫の姿。
初めて知ったことだったけど、大虎さんてのは、何とロマの父さん(の意思が、姿を変えて傍にいてくれる存在)なんだそうだ。いなくなったのを必死に探すロマの様子に納得がいった。
周囲を探しても見付からなかったから、声を張って呼んでみたら、その他大勢の子猫さんたちと一緒に、大虎さんも姿を見せてくれたので、ほっと一安心っ。
シェリルも言ってたけど、自分から行動できる猫の姿となった今、あんまりロマに心配な顔をさせないで欲しいとこだよね、うん。
掃除計画を立てついで、彼女の唯一の得意料理をごちそうになるために、ロマと一緒にシェリルの家にお邪魔した。
家に入って振り返ったら、さっき呼び寄せた子猫さん達もついてきてたもんだから、童話の中の笛吹きみたいになった気分だったよ。
■繁華街の噴水広場にて■
(シェリル・リン、ロマ)

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