誰か(あるいは何か)を一心に憎んだことがあるか、思い返す機会になった。
この街に来てから、そう根深く恨んだことはなかったように思う。
少なくとも今はそういうものはない、と思う。
きっと、ぱっと思い出せないだけなんだろう。憎むべきものの姿があったら、もしかしたら気持ちが昂るかも知れないんだけど。
誰かを憎んだり、嫌いになったりするのなんて、誰にでもある当たり前のことだと思うんだ。
でも、それをしないために自分を憎むって言ったエイザーの気持ちも、極端だけどわからなくはない。
わからなくはない、けど、その後死ぬべき時を間違えたと言ったことに、思わず反論しようとしたけど、どうも今日は彼女、疲れてたみたい。
だから反論はまたにして、今日は宿まで送っておいた。
その後ロッカードに、紐のかわりの腕輪を買って帰る。
エイザーにもらったナツメヤシもあげようと思ったけど、存外甘かったので、これは俺が食べることにした。
機嫌を直してくれると良いけど。
■城塞の都・都のバザールにて■
(エイザー、ロッカード)