月夜は静かなだけじゃない、こと、この都のバザールでは。
夜も賑やかなバザールを眼にすれば、そりゃわかりはするけど、俺が今夜それを実感したのは、マディンが受けたのがどうも危ない仕事だったみたいで、おっかけられてる様子だったからだ。
幸い、俺の前に現れたのはまいた後だったようで、一瞬の緊迫の次には静かな時間になっていた。
そこへ、彼が来る前に俺が考え事をしてたのを、マディンはただ事ではないと見たらしい。
さすがに月は答えてくれないので、俺が考えていたことを話すことにする。
そう、孤島へ出かけるかどうか、って迷い事だ。
止められはしなかったけど、止めておいた方が良い、と言われた。
もしも行くなら、どうしてもなら護衛として付き合う、とも。
そう言われるまで、誰かと一緒に行こうとは思い付かなかった。
依頼を達成するんなら、それが一番安心だろうに、そもそも俺は歌唄いなんだしね…!
少し喋り過ぎちゃった気はするけど、聴いてもらって意見をもらうと、やっぱり新鮮な気持ちになる。幸い期限まではまだもうちょっとあるから、もう少し迷ってみようと思う。
そう言えば、マディンは自分の父さんが冒険者だったから、それを追うように冒険者になったんだそうだ。
場数をこなしてる流れ者、って印象があったから、ちょっと意外に思ったなんては、ここだけの秘密にしておこうか。
■城塞の都・都のバザールにて■
(マディン)
